顧客問い合わせ対応はどこで詰まるのか AIとプロセスマイニングで顧客対応を改善する

はじめに

見えにくい停滞はどこで生まれるのか

顧客問い合わせ対応の業務改善が難しい理由は、回答のわかりやすさや対応スピード、担当者ごとの対応のばらつきといった応対品質の課題が、コールセンターやサポート部門だけで完結しないからです。カスタマーサポートの担当者が丁寧に応対していても、承認待ち、引き継ぎ漏れ、情報検索の遅れ、他部門への確認、例外処理の多発が重なることで、処理時間はすぐに長引いてしまいます。つまり、担当者一人ひとりの努力とは別のところで、組織をまたぐ連携のなかに時間のロスが潜んでいるのです。

その結果として、業務負荷は増し、回答のばらつきも生まれ、顧客満足度の低下にもつながります。だからこそ重要になるのが、現場の感覚ではなく、実データに基づいて顧客対応の流れを捉える視点です。

本記事では、AIを活用したプロセスマイニングによって顧客対応の詰まりを可視化し、改善へとつなげる考え方を整理します。

現状課題の深掘り

問い合わせ対応は前工程と後工程で分断されやすい

顧客問い合わせ対応は、受付、分類、一次回答、エスカレーション、調査、承認、返信、完了という一連の流れで進みます。

しかし実際には、CRM(顧客関係管理システム)、ERP(基幹業務システム)、チケット管理ツール、メール、チャットなどに履歴が分散し、全体像を把握しにくいのが現状です。SLA、一次応答時間、解決までのリードタイム、再問い合わせ率、転送回数といったKPIは数値として見えていても、どの業務ステップでボトルネックが発生しているのかは曖昧なままというケースが多く見られます。特に、返品、請求、配送遅延、契約変更のようにフロントとバックオフィスがつながる案件ほど、対応経路のバリエーションが増え、標準化しにくくなる傾向があります。

担当者ごとに使う手順やチェック項目が微妙に異なることも多く、同じ種類の問い合わせでも完了までの時間に大きな差が生まれやすいという特徴もあります。

現場の感覚だけではボトルネックを特定しにくい

会議やヒアリングだけで業務改善を進めると、よく知られた問題ばかりが議題に上がり、頻度は低くても影響の大きいつまづきを見落としがちです。

たとえば、製造業のアフターサポート業務では、問い合わせ全体の件数よりも、特定条件の案件で手戻りや再承認が集中しているケースがあります。流通業の顧客対応でも、担当者変更や確認の差し戻しが重なる一部の案件が、全体の処理時間を押し上げることがあります。

こうした詰まりは全体をまとめた数字だけでは見えてきません。統計分析、条件によるフィルタリング、部門間のベンチマークを通じて、どの属性、どの経路、どの担当者群で遅延が起きやすいかを見極める視点が欠かせないのです。

プロセスマイニングの解決価値

イベントログから実態を可視化する

プロセスマイニングとは、システムに残るイベントログを使って、業務の実行順序と工程間の時間差を可視化し、実際のプロセスを分析する手法です。

問い合わせ対応に当てはめると、受付日時、担当変更、回答送信、承認完了、クローズといった一連のタイムスタンプを時系列に並べることで、業務の実態を可視化できます。これにより、ボトルネック、対応経路の業務ルートパターン、想定フローとの適合性チェック、リードタイムの長期化、再作業の発生箇所が具体的に見えてきます。AIとプロセスマイニングを顧客対応に活かす価値は、単に業務を見える化することにとどまりません。想定していたフローと実態のずれを把握し、どの案件群に改善余地があるのかを定量的に示せる点にこそ本質があります。

AIで原因仮説と改善優先順位を絞り込む

さらに、AIを組み合わせたプロセスマイニングでは、集計結果を眺めるだけでなく、対話形式で原因を掘り下げやすくなります。

たとえば「再問い合わせ率が高い案件にはどのような特徴があるか」「処理時間が長い案件に共通する条件は何か」「一次回答後に停滞しやすい経路はどれか」といった問いに対して、KPI、フィルタ条件、統計傾向を横断して確認できるようになります。

ProcessFlareのように、プロセス可視化、KPI分析、条件によるフィルタリング、パフォーマンス分析、AIによる業務改善支援が一体になった環境があれば、分析結果を現場の打ち手に落とし込みやすくなります。より詳しい考え方は、「ProcessFlareの導入プロセス」や「選ばれる理由」で解説しています。導入後の変化を短時間でイメージしたい方は、「動画でわかる!プロセスフレアのDX支援」もご覧ください。

活用を定着させる実践論

最初に見るべき業務とデータ

顧客対応でAIとプロセスマイニングを使う際は、最初から全ての問い合わせを対象にしないことが重要です。

まずは、件数が多い、処理時間が長い、顧客への影響が大きい領域を選びます。たとえば、返品受付、配送遅延、請求照会、契約変更などが対象になりやすい業務です。

そのうえで、ケースID、アクティビティ、タイムスタンプという三要素を確認し、問い合わせ番号や顧客番号でどこまで追跡できるかを見極めます。この土台が曖昧なままだと、どれほど高度な分析を行っても十分な精度は得られません。サプライチェーンやO2C(受注から入金までの一連の流れ)の影響を受ける問い合わせであれば、前後の工程も含めたデータ連携を検討する価値があります。

成果を出しやすい進め方

進め方としては、対象業務の選定、アクティビティの定義、データ結合の設計、ケース属性の整理という順序で進めると安定します。

次に、現状の対応経路のバリアントを把握したうえで、SLA逸脱率、平均処理時間、再対応率、エスカレーション率、担当者別の差異などを確認していきます。

その後、AIを使って仮説を絞り込み、標準化、自動化、RPAとの連携、ナレッジの整備、承認ルールの見直しといった具体的な改善策につなげていきます。費用対効果は、削減できる工数や人件費だけでなく、再問い合わせの抑制、顧客離脱の防止、キャッシュフローへの影響まで含めて考えると、経営判断としても納得感のある形で示しやすくなります。特に、改善前後の処理時間を具体的な数値で示せると、経営層への説明材料としても説得力が増します。

活用イメージは「ユースケース」でも確認できます。

よくある質問

AIがあると何が変わりますか?

AIがあることで変わるのは、分析結果を自動で出してくれる点ではなく、論点整理のスピードです。プロセスマイニングとAIを組み合わせた顧客対応改善では、異常な経路、想定より長い待ち時間、特定属性への偏りを見つけやすくなり、現場が次に確認すべきポイントを絞り込みやすくなるのが特徴です。

データが散在していても進められますか?

進められます。ただし必要なのは、大量のデータそのものではなく、追跡可能な形に整ったデータです。ケースID、アクティビティ、タイムスタンプの三要素がそろい、主要な属性を結合できれば、段階的に分析を始めることができます。システムが複数にまたがっている場合も、影響範囲の大きい業務から段階的にデータを結合していけば十分です。最初は限定した領域から着手し、そこで得られた知見をもとに後から対象範囲を広げていく方法が、現実的かつ着実な進め方といえるでしょう。

まとめと次の一手

まず着手したい確認事項

顧客問い合わせ対応の詰まりは、担当者一人ひとりの努力不足ではなく、業務プロセス全体の設計や運用のゆがみとして起きていることが少なくありません。AIとプロセスマイニングによる顧客対応の見直しは、感覚的な議論から離れ、どこで、なぜ、どれだけ滞っているのかを事実に基づいて示せる点に強みがあります。まずは対象業務を絞り込み、イベントログとして取得できるデータの有無を確認したうえで、改善余地の大きい経路から可視化を始めていくことが現実的な進め方です。

問い合わせ対応の処理時間、応対品質、業務負荷、顧客体験を同時に見直したいとお考えの場合は、まず現状業務の流れと分析可能なデータの範囲を整理することが第一歩になります。ProcessFlareの相談窓口では、対象業務の整理から可視化の進め方まで、無料でご相談いただけます。詳しくは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。