AI活用の効果が出ない本当の理由 プロセスマイニングで見える「業務の現実」

はじめに
AIを導入したものの、「PoCから先に進まない」「現場でうまく活用されない」「期待したほど成果につながらない」。こうした悩みを抱える経営者や業務改善責任者は少なくありません。
その原因として、AIの性能や社員のITスキルに目が向きがちですが、実はその前に確認すべきことがあります。それが、「自社の業務プロセスが実際にどのように行われているのか」を正しく把握できているかという点です。
プロセスマイニングは、システムに残るデータをもとに実際の業務プロセスを可視化し、どこで滞りや手戻りが起きているのかを明らかにする手法として、近年注目を集めています。
AI投資が成果につながらない企業に共通する構造
データはあるのに、業務プロセスは見えていない
ERP(基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理システム)には、日々多くのデータが蓄積されています。しかし、売上や処理件数を集計できても、「注文がどのような業務プロセスで処理され、どのプロセスで処理が止まり、なぜ差し戻しが起きたのか」まで把握できているとは限りません。
ある調査では、業務の可視化に表計算ソフトや文書作成ソフト、プレゼンテーションソフトなどが多く使われていることが分かりました。こうしたツールでは、担当者が情報を集めて資料にまとめる方法が中心となるため、実際の業務がどのような業務プロセスで進み、どこで問題が起きているのかまで把握することは簡単ではありません。
このような状態でAIに「業務を効率化してほしい」と求めても、AIが実際の業務プロセスを十分に把握できていなければ、具体的な改善策を導き出すことは難しくなります。
標準プロセスと現場の実態にはズレがある
マニュアルでは「受注、承認、在庫確認、出荷」といった基本的な業務プロセスが決められていても、実際の業務がすべてその通りに進むとは限りません。現場では、再承認や差し戻し、納期変更など、通常とは異なる処理が日常的に発生しています。
こうしたマニュアル上の手順(標準プロセス)と実際の業務の違いを把握できていないことが、特定の担当者に業務が偏ったり、余計な作業や待ち時間が発生したりする原因の一つとなっています。
プロセスマイニングとは何か
プロセスマイニングとは、業務システムに残るイベントログ(操作や処理の記録)をもとに、実際の業務プロセスがどのように進んでいるのかを可視化する手法です。基本となるのは、案件を識別する「ケースID」、実行された作業を示す「アクティビティ」、その作業が行われた時刻を示す「タイムスタンプ」という3つの要素です。
例えば、受注番号をケースIDとして、「受注登録」「在庫確認」「出荷指示」といった作業を実行された順番に並べることで、一件一件の注文が実際にどのような業務プロセスで処理されたのかを確認できます。多くの案件をまとめて分析することで、処理にかかった時間や業務が滞っている箇所、手戻り、通常とは異なる例外処理などを把握できるようになります。
従来のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールでは、平均処理時間などの集計結果を確認することが中心です。
一方、プロセスマイニングでは、部門や担当者、金額、顧客などの条件ごとに業務プロセスを確認できるため、「なぜ一部の案件だけ処理に時間がかかっているのか」といった原因まで詳しく分析できます。
業務全体を可視化することで、一部の案件だけ処理に時間がかかっていたり、特定のプロセスで差し戻しが多く発生していたりすることが分かる場合があります。こうした問題が起きている箇所や原因を確認し、業務プロセスを見直すことで改善につなげることができます。このように、集計した数字だけでは気づきにくい業務上の問題を見つけられることが、プロセスマイニングの強みです。
プロセスマイニングがAI活用の土台になる理由
AIとプロセスマイニングを組み合わせることで、実際の業務の流れをもとに、より具体的な分析ができるようになります。プロセスマイニングで業務を可視化することで、「どの工程に時間がかかっているのか」「どのような場合に手戻りが増えているのか」といった業務上の課題を見つけやすくなります。さらにAIを活用することで、専門的な分析スキルがなくても、こうした課題の原因や改善方法をより詳しく確認できます。
AIを業務改善に活用するためには、文書や集計した数字だけでなく、「実際の業務がどのような手順で進んでいるのか」という情報も重要です。プロセスマイニングで実際の業務を把握したうえでAIを活用することで、現場の状況に合った、より具体的な改善につなげやすくなります。
ProcessFlareの取り組みについては、動画でも分かりやすく紹介しています。動画でわかる!プロセスフレアのDX支援もあわせてご覧ください。
導入を成功させるための実践ステップ
最初から全社を対象にしない
プロセスマイニングを導入するために、最初から全社のデータやシステムを整える必要はありません。まずは、改善による効果が期待でき、日常的に多くの処理が発生している業務の中から、対象を一つに絞って始めることが重要です。
対象となる業務を選ぶ際は、「改善することで大きな効果が期待できるか」「必要なデータを取得できるか」といった点を確認します。また、各作業が行われた時刻を取得できるか、複数のシステムにまたがる業務を同じ案件として追跡できるか、業務に詳しい担当者が分析に参加できるかなども、事前に確認しておくことが重要です。ProcessFlareの導入プロセスについてはこちらで詳しく紹介しています。
KPIと改善効果を先に定義する
「AIを使うこと」自体が目的になってしまうと、導入によってどのような効果が得られたのかを判断できません。そのため、処理にかかる時間や手戻りの割合、期限内に完了した割合、作業時間など、改善の成果を確認するための指標をあらかじめ決めておくことが重要です。
例えば、日々発生している確認作業の時間を少しずつ短縮できれば、全体では大きな作業時間の削減につながる可能性があります。削減できた時間を人件費などに置き換えることで、改善によってどの程度の効果が得られたのかを具体的に確認できます。
可視化して終わらせず、改善サイクルを回す
プロセスマイニングは、一度業務の流れを可視化して終わりというものではありません。改善策を実施した後も同じ指標を確認し、業務の滞りや通常とは異なる処理が実際に減っているかを継続して確認することが重要です。
業務を可視化し、問題の原因を調べ、改善策を実施し、その効果を確認する。この流れを繰り返すことで、一度きりの取り組みではなく、継続的な業務改善につなげることができます。ProcessFlareが選ばれる理由についてもこちらで紹介していますので参考にしてください。
よくある質問
データをすべて整えてから始める必要がありますか?
いいえ、最初から全社のデータをすべて整える必要はありません。まずは対象とする業務を一つに絞り、案件を識別する「ケースID」、実行された作業を示す「アクティビティ」、作業が行われた時刻を示す「タイムスタンプ」の3つの情報がそろっていれば、小さな範囲から分析を始めることができます。
決められた手順どおりに進んでいない業務でも分析できますか?
はい、分析できます。実際の業務では、決められた手順とは異なる処理や手戻りが発生することがあります。プロセスマイニングでは、決められた手順と実際の業務の流れを比較することで、どこで違いが生じているのかを確認し、見直すべきポイントを見つけることができます。
プロセスマイニングは製造業以外でも使えますか?
はい、さまざまな業種で活用できます。例えば、受注から入金、購買から支払いまでの業務など、複数の部門や担当者が関わる業務の流れを可視化・分析できます。実際の活用事例はユースケースのページでもご紹介しています。
まとめ AIが分析できる業務基盤をつくる
AIを導入しても思うような成果が得られない場合、AIの性能や社員のITスキルが原因とは限りません。本当に見直すべきは、その前段にある「業務の実態をデータで捉えられているか」という点です。
プロセスマイニングを活用すれば、実際の業務の流れを可視化し、どこで処理が止まっているのか、どのような手戻りや通常とは異なる処理が発生しているのかを確認できます。こうした情報をもとにAIを活用することで、実際の業務に合った分析や改善につなげやすくなります。まずは改善したい業務を一つ選び、その業務が実際にどのように行われているのかを確認することが、AI活用を進める第一歩です。
プロセスマイニングの基本的な考え方についてさらに詳しく知りたい方は、プロセスマイニングとはのページもあわせてご覧ください。
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