AIとプロセスマイニングで見抜くイレギュラー業務の正体

はじめに

企業の実際の業務では、あらかじめ決められた手順とは異なる対応が必要になることがあります。たとえば、通常とは異なる値引き、何度も差し戻される申請、特定の担当者だけが行う特殊な処理などです。問題は、こうしたイレギュラー業務が大量の取引に埋もれてしまい、表計算ソフトや現場へのヒアリングだけでは実態を把握しにくいことにあります。

そこで注目されているのが、AIとプロセスマイニングを組み合わせた分析方法です。イベントログから実際の業務プロセスを再現し、通常とは異なる処理や、発生頻度の低い業務プロセスを可視化したうえで、AIを活用して詳しく分析します。本記事では、例外処理、逸脱分析、コンプライアンス、監査への活用方法を実務の視点から解説します。

なぜイレギュラー業務は見えにくいのか

標準フローだけでは実際の業務を説明できない

業務マニュアルには、一般に最も望ましい処理手順が記載されています。しかし現場では、在庫不足、顧客からの特別な依頼、緊急対応、担当者の不在などを理由に例外処理が発生します。

例えば受注から入金までの流れでは、受注、承認、出荷、請求、入金という手順が決められていても、実際には承認後の内容変更や出荷後の訂正、請求書の再発行など、さまざまな業務ルートパターンが存在します。購買から支払までの流れでも、事後承認や発注内容の変更、差し戻しなどが起こり得ます。問題は、業務上必要な例外処理と、決められたルールに反する処理が混在し、それぞれの実態を把握しにくいことです。

手作業では業務の実態を十分に把握できない

業務プロセスの可視化に関する調査では、多くの企業が現在もExcelやWordなどを使い、手作業で業務プロセスを整理していることが示されています。しかし、こうした方法では、資料を作成した時点の業務プロセスしか把握できず、日々発生する例外処理や手戻りなど、実際の業務の変化を継続的に捉えることは困難です。

数万件、数十万件に及ぶイベントログの中から、通常とは異なる処理手順や処理時間が極端に長いケース、特定の条件でのみ発生する手戻りなどをすべて見つけ出すことは、手作業での確認だけでは困難です。製造、流通、金融、バックオフィスなどの現場では、例外処理の肥大化がリードタイムや在庫、キャッシュフローに影響するだけでなく、過剰な割引や返品、権限を超えた処理といった監査上のリスクにつながる場合もあります。

AIとプロセスマイニングが生む分析価値

プロセスマイニングは「いつもと違う流れ」を可視化する

プロセスマイニングでは、基幹業務システムなどに蓄積されたイベントログから、ケースID、アクティビティ、タイムスタンプという3つの要素を基礎データとして、実際の業務プロセスを再構成します。

これにより、担当者への聞き取りだけでは分からなかった手戻りや通常とは異なるプロセスでの処理、作業の停滞、手順の入れ替わりなどをデータから確認できます。標準的な業務プロセスと実際の業務プロセスを比較することで、承認前に次の工程へ進んでいるケースや、特定の作業が繰り返されているケースなど、本来の業務プロセスとは異なる動きを把握できます。基本的な仕組みは、プロセスマイニングとは何かで解説しています。

AIは「見るべきケース」を絞り込む

プロセスマイニングが業務の構造を可視化する一方で、AIは大量のケースの中から特徴的なパターンを見つけ出す役割を担います。

例えば、平均から大きく外れたリードタイム、発生頻度の低い業務ルート、特定の属性に偏って発生する例外処理などです。KPIによる統計分析や条件を絞り込むフィルタリングと組み合わせれば、確認すべき問題の候補を段階的に絞り込めます。

重要なのは、標準的な手順に沿わない事が、必ずしも異常を意味しない点です。高額な案件だけ特別な承認が必要になる場合など、業務上正しい例外も少なくありません。AIとプロセスマイニングは不正を自動的に断定する仕組みではなく、人が確認すべきケースを効率よく見つけるための分析基盤と位置づけるべきものです。

例外処理の発生傾向を分析し、改善につなげる

例外処理が発生していることを把握するだけでなく、その発生頻度や処理時間、発生条件を詳しく分析することも重要です。

例えば、承認後の内容変更が特定の部門で繰り返し発生していないか、通常とは異なる承認の流れが処理時間の長期化につながっていないかなどを確認します。

さらに、属性別の統計やKPIと組み合わせることで、例外処理が発生しやすい条件や、業務全体の処理時間に与える影響などを把握できます。こうした分析結果をもとに、業務上の事情も踏まえながら、必要な例外処理と改善を検討すべき例外処理を見極め、業務プロセスの見直しにつなげることができます。

実務で成果につなげる進め方

まず対象プロセスと「異常」の定義を決める

AIとプロセスマイニングを活用する際、最初から全社のデータを対象にする必要はありません。購買、受注、請求、経費精算など、取引件数が多く、改善価値や監査上の重要性が高い業務から始める方法が現実的です。

次に、どのような状況を例外処理と判断するかを整理します。決められた手順とは異なる承認、通常より時間がかかっている業務、同じ作業のやり直し回数などが、主な確認項目です。ProcessFlareの考え方では、ケースID、アクティビティ、タイムスタンプを中心にデータを整備し、可視化、バリアント分析、KPI分析、AIによる対話型分析へと段階的につなげます。活用の広がりは、ユースケースのページも参考になります。

AIの結果を業務知識と組み合わせる

成功のポイントは、AIが示した結果だけで改善の判断を完結させないことです。

発生頻度の低いプロセスが表示されたとしても、それが業務上不要なプロセスなのか、業務上必要に迫られて処理したプロセスなのかは、業務知識がなければ正しく判断できません。プロセスの責任者や現場担当者、監査・コンプライアンスの担当者が同じデータを見ながら原因を検証する体制が重要になります。

ProcessFlareが目指すAIによる対話型分析のような仕組みでは、プロセスの統計要約や改善案を自然な言葉で確認できるため、どの条件で例外が増えているか、どの工程を優先的に確認すべきかといった深掘りを支援できます。こうした仕組みを支える考え方は、選ばれる理由でも紹介しています。

費用対効果は、削減できた調査時間や再処理時間、リードタイム、監査工数などを基準に評価します。異常が見つかった件数だけでなく、業務改善によって削減できた費用や時間を継続的に確認することが重要です。

よくある質問

Q. AIだけでは不十分ですか?

AIはデータ上の特徴を見つけることに適していますが、業務の前後関係を理解するにはプロセスの視点が必要です。AIとプロセスマイニングを組み合わせることで、何が違うかだけでなく、どの工程を経て異常に至ったかを分析しやすくなります。

Q. 例外処理はすべて減らすべきでしょうか?

いいえ。顧客対応や緊急対応など、必要な例外も存在します。重要なのは例外を一律に排除することではなく、頻度や処理時間、コスト、リスクを可視化し、標準化すべきものと残すべきものを分けることです。

Q. 監査にも利用できますか?

イベントログをもとに処理手順や業務ルートパターンを確認できるため、監査対象の絞り込みやコンプライアンスの確認に活用できます。ただし、最終的な不正の認定や監査上の判断は、関連資料や業務ルールを含めて人が行う必要があります。

まとめと次のステップ

AIとプロセスマイニングの組み合わせは、これまで見えにくかった例外処理や逸脱、手戻りをデータから把握するための方法です。プロセス全体を可視化し、AIで分析対象を絞り込むことで、監査や業務改善をより事実に基づいて進めることができます。

自社にも、理由は分からないが頻繁に発生する例外や、標準的な業務プロセスから外れている可能性のある業務があるなら、まず一つのプロセスを可視化するところから始める方法があります。ProcessFlareでは、業務ログを活用しながらプロセス可視化からKPI分析、AIによる改善支援まで一連の分析を行っています。導入の進め方は、導入プロセスのページでも紹介しています。まずは無料相談から、自社の業務プロセスに潜むイレギュラーを一緒に見つけてみませんか。ProcessFlareへのご相談はこちらからお問い合わせください。